実はジャーナリストはひとつの自制を課しているものなのです。自分たちが出遭った人々は確かに現代史の巨人である。だからと言って我々が偉大であるわけではない。みだりに彼らの名を口にするようなことはすまいと自らに言い聞かせてきました。そうした一方で、筆を執らなければ、現代史が紡ぎだされる瞬間も、記録されないまま虚空に消え去っていきます。
自制と責務―。そんなふたつの想いをわが胸底で発酵させているうち、政治のなかに黒々と影を落としている死を通奏低音に一冊の本を編めないかと考えるようになりました。
取りあげた人々の多くは海外特派員生活のなかで出遭った人々ですが、言うまでもなく、わが思いは常に日本と共にありました。いつの日か、この国に国際社会から尊敬の眼差しで迎えられるような先導者が出てほしい。そんな願いをこめて筆を執り続けました。皆さんにわが思いを汲んでいただければ幸いです。
二〇〇八年四月二十四日 手嶋龍一 |