詩人堀口大学の葬儀が葉山で営まれたとき、親族の席にひっそりと座っていたそのひとを見たことがある。その凜とした喪服姿があまりに美しく、隣席の人にどなたなのでしょうと思わず尋ねてしまった。
「あの方が濱谷朝さん。『迎え火』という作品の被写体になった女性です」
カメラマンの濱谷浩が、越後高田で茶道の師匠をしていた朝を撮影したのである。軍医だった彼女の夫を奪った戦争が終わって三年目のことだった。黒髪をきりりと結いあげたその和服姿は迎え火に照り映え、輝いている。ふたりは烈しい恋に落ち、まもなく結ばれた。
先日、高田を訪れた折に、善導寺の境内に朝の旧居跡を訪ねてみた。桑取谷の古老が案内してくれた。しんしんと降りしきる雪のなかを行く角巻き姿は眩しいばかりに美しかったと訥々と語ってくれた。それは昭和という動乱の時代を生き抜いた日本女性の最後の光芒だったのかもしれない。
|