― 二〇〇一年九月十一日、NHKのワシントン支局長時代におきた米中枢同時テロの「取材現場」についてお聞きしたいのですが。
手嶋 出勤途中にラジオで一報を聞いたのですが、一機目がニューヨークの世界貿易センター(WTC)に激突したと報じられたときには「事故じゃないかな」と考えていました。しかし、二機目が再びWTCに、そしてワシントンのペンタゴン ( 国防総省 ) にも航空機が突入した。国際組織による同時テロ。ぼくらの想像をはるかに超えるような重人事が起こっている、と悟りました。
― そして十一日間連続、二十四時間体制の報道が始まった。
手嶋 いま起こっていることは、世界の歴史の中でどういう意味があるのかを読み解きたいと思いましたが、そういったジャーナリストの“本能”に懸命に手綱をかけました。刻々と進行する事態を伝えることに集中すべきだと考えたからです。
― 同時テロのときもそうでしたが、落ち着いた語り口が印象に残っています。
手嶋 比較的、厳しいことを言ったり、コメントしたりするときには、ロー・キーと言いますか、穏やかに話すようにしています。その方が相手によく伝わるのですね。体験から言えば、興奮したり、正義感をふりかざしてみたりしたときには、誤解を生んだり、間違っていたりする場合の方が多い。視聴者の方々は賢明で、鋭い直感をお持ちです。同時テロの報道のさい、もし、印象に残る報道ができたとすれば、それは知らないこと、想像したことはお伝えしない、分からないことは「分からない」と言い続けたことが理由なのではないでしょうか。
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