手嶋龍一

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「競馬の世界はインテリジェンス・ワールドだ!」

●競馬は最高のインテリジェンス・ゲーム

暮れの有馬記念は9番人気の伏兵マツリダゴッホが制する大波乱となった。レースが開催された中山競馬場――。そこは外交ジャーナリスト・手嶋龍一氏にとって“情報の現場”のひとつだ。「競馬は最高のインテリジェンス・ゲーム」。ここで手嶋氏が言う「インテリジェンス」とは、単に極秘情報や機密情報というだけの意味にとどまらない。

「誰もが知りたいと願う近未来を予測する技こそがインテリジェンス。ジャーナリストの仕事は、近未来という“悪魔の領域”に踏み込んで、膨大な国際情報の海から、ホンモノをえり抜き、分析をして裏を取り、世界はどこに向かっていくのか、それを予測することにあります。しかし、近未来を予測することは“錯誤の葬列”とも言われる通り、いかに鋭い分析をしても、多くの誤りを含んでいる。それほどに、未来を言い当てることは難しいのです。そして、競馬こそ、まさに近未来を予測する鍛錬の場なのです。血統やターフ情報など膨大な情報の中から、これだという情報をえりすぐり、1頭の馬を選びだす。でも誤ることのほうが多い。どれほど未来を予測することが難しいか、それを自分に言い聞かせる意味でも、インテリジェンス感覚を磨く意味でも、競馬は最高のインテリジェンス・ゲームなのです」

●1対1で得られる情報にこそ金鉱脈がある

情報の入手2つの道があると手嶋氏は言う。ひとつは独自に調べ、取材して情報源に近づく道。これが極秘情報を扱うインテリジェンス。もうひとつは誰もがアクセスできる公開情報への道だ。いまはインターネットを使えば誰でも簡単に公開情報にアクセスできる。だが、ネット検索は便利な反面、落とし穴もあると手嶋氏は言うのだ。

「ネットは検索が簡単で、目的が明確なだけに、その道行に潜んでいる重要情報を逃してしまう危険がある。しかも、同じキーワードで検索すれば全員に同じ答えが返ってくる。その意味で情報の価値は低い。そこには誰でも行き着くことができる。だが、公開情報を軽んじてはいけない。べからず。図書館の膨大な情報の山に分け入って“宝の山”を探すには、それなりの努力が必要です。もちろん、ネット検索を否定するわけではありません。ものを書くときに、私もグーグルなどを利用しないわけではありませんが、いちばん重要な取材ではネットを利用しないと自分に言い聞かせています。その理由は一言で言うと『人間の顔をした情報』が得られないからです。いちばん重要な情報は一人の人間が持っている。言い換えれば、人間対人間、1対1で得られる情報にこそ“金鉱脈”があるのです。私の情報源? それは申し上げられません。最後はやはり『人』に行き着きます。これだけは断言できます」

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