手嶋龍一

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徳間書房インタビュー

 外交ジャーナリストの手嶋龍一氏と、元外交官の佐藤優氏による「インテリジェンス対論3部作」が大ヒットを記録、累計40万部の売上げを突破した。昨年12月刊行の本書では、イスラム国の脅威をいち早く指摘するなど、未来への鋭い予言がなされている。手嶋氏に今回の「イスラム国」日本人殺害事件を中心に話を聞いた。

 本書で指摘されている「イスラム国(ISIL)」の脅威が早くも現実となり、手嶋氏らの予言は的中してしまった。

「インテリジェンスは未来を射貫くものです。その中で私たちはISILが中東だけでなく、全世界の新たな脅威になると分析していました」
 1月の安倍首相の中東訪問の段階で「官邸のインテリジェンスは機能していなかった可能性が高い」と手嶋氏は厳しい目を向ける。
「首相は1月17日のカイロでの演説で『ISILと戦う周辺国に総額2億ドルを支援する』と表明しました。この発言がISILに事件の口実を与えたことは明らかです。昨年10月の段階で首相官邸が日本人2人の誘拐の事実をつかんでいたのですから、外務省のインテリジェンス部局と連携し、彼らに逆手に取られないよう戦略を練るべきでした。やはり情報の回路が十分に機能していなかった」
 90年の第一次湾岸戦争では、カネだけで全てを済ませて国際社会から非難された日本。そのトラウマからか、安倍政権は集団的自衛権の行使に踏み切り、中東でも「イスラム国」と戦う周辺国に支援を表明して、人質事件に遭遇しました。
「歴史的にも地理的にも遥かな中東で、日本が積極的外交を展開する実力を備えていたのかが問われるべきです。実力を超えた外交は返り血を浴びてしまう」

 さらに手嶋氏は日本の情報収集の能力についてこう指摘する。
「日本はG8で唯一対外情報機関を持っていない。対外情報機関は持つべきですが、人材の育成だけで半世紀以上かかります。今回の人質事件は、今まで安穏と過ごしてきた戦後のニッポンのツケが回ってきたと受け取るべきでしょう」
 そんな戦後の日本に一石を投じようと編まれた本書では、21世紀の火薬庫となったウクライナ情勢をはじめ新たな紛争を分析し解を導いている。一貫して語られているのはインテリジェンスの重要性だ。
「インテリジェンスは、単なるスパイ活動ではありません。国家が生き残るために不可欠な選り抜かれた情報のことです。膨大で雑多な情報の海から事態の本質を照射する業なのです」

 インターネットと人脈を駆使すれば、民間人でもインテリジェンスの分析は可能だと手嶋氏は言う。
「人質事件は無惨な結果となりましたが、インテリジェンスの大切さを思い知るきっかけになりました。事件の本質を読み解くテキストとして本書を活用していただければ幸いです」

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